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人類史上最大の感染症 歯周病について

ギネス認定!!

歯周病は人類史上最大の感染症としてギネスに認定されています。
歯周病予備軍を含めると、なんと国民の70%が感染していると言われています。(20代でも約半数が感染しているそうです。)

歯周病とは

歯周病は、プラークに潜む歯周病菌で、それによって引き起こされる感染症が歯周病です。「歯周病菌」というのは特定の一つの菌を指しているわけではなく、歯周病の発症・進行に関与する細菌の総称です。実際には、800種類を超える細菌が歯周病の発症・進行に関与していると言われています。なかでも、特に注意を要するのが「レッドコンプレックス」と呼ばれる細菌です。

■レッドコンプレックスとは?

レッドコンプレックスとは歯周病の進行を早める細菌のことで、具体的には以下の3種の細菌のことを言います。

・P.g菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
・T.f菌(タネレラ・フォーサイシア)
・T.d菌(トレポネーマ・デンティコーラ)

レッドコンプレックスの3つの菌が揃うと歯周病が進行しやすくなりますが、なかでもP.g菌がもっとも病原性の強い細菌だと言われています。

怖いのは、現在のところP.g菌はどこから感染するのか分かっていません。歯周病でない人の口腔内から検出されることもあることから、常在菌かもしれないという説もありますが、思春期以降の唾液感染によるものという考え方が有力です。

口腔内が健康な状態であればP.g菌は低病原性であり、感染していても体に害が及ぶことはほとんどありません。しかし、ブラッシングが不十分になるなどして口腔内が不衛生な状態になると、歯茎に炎症が起こり、歯茎から出血するようになります。そうなると、P.g菌はたちまち高病原性になります。

P.g菌の特徴の一つとして、血液をエサにするという性質があります。そのため、歯茎からの出血があるとP.g菌は血液をエサにして数百倍から数万倍にまで増殖して、歯周ポケットをどんどん深くしていくのです。また、P.g菌は酸素のない場所を好みます。歯周ポケットの深さが4mm以上になるとポケットの奥深くは酸素が少なくなるため、P.g菌はますます活発になります。そうなると、私たちの体はP.g菌を避けるために自ら骨を溶かします。これが、歯周病によって顎の骨が溶かされるメカニズムです。

■「P.g菌と歯周病」に関する最近の考え方

ここまでご説明したとおり、歯周病は「P.g菌を代表とするレッドコンプレックスによる細菌感染症」であると言えます。しかしながら、近年の研究によって、P.g菌は免疫を抑制する働きがあることが分かってきました。健康な状態であれば、私たちの口腔内は常在菌がバランスの良い状態で保たれています。しかし、口腔内でP.g菌が増えると身体の免疫バランスが崩れます。その結果、「歯周病に関連する他の細菌が増えることで歯周病が進行する」と考えられるようになってきました。P.g菌によって宿主の防御機能が低下することで、他の常在菌の数や組成に変化が起き、それによって歯周病が発症・進行するという考え方です。

今後の研究に注視する必要がありますが、いずれにしてもP.g菌はプラーク(歯垢)のなかで増殖することに変わりはありません。歯周病の発症・進行を防ぐには、プラークの取り残しをできるだけ少なくする「プラークコントロール」が重要です。


歯周病と全身疾患の関係

また歯周病は、口腔内だけでなく、全身の健康にも影響を与える可能性があります。

・心臓疾患
・脳血管疾患
・糖尿病
・骨粗鬆症
・消化器系のがん
・誤嚥性肺炎
・早産と低出世体重時
・メタボリックシンドローム


など、多種多様な疾患との関係が指摘されています。

歯周病菌は内毒素を吐き散らします。内毒素は細菌の細胞壁に含まれる毒素で、細菌が死滅しても毒素は身体に残ります。(エンドトキシンとも言います。)

つまり、歯周病予防は健康管理の入り口と言えるほど、非常に大切だということがお分かりいただけるかと思います。誰でも感染しやすく、全身の病気とも関連が強い歯周病にならないよう、日頃からお口のケアをしっかりしていきましょう。