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お口と腸の関係

口と腸は繋がっている

口腔環境と腸内環境にも関連があることが最新の研究により明らかになってきました。
食べ物はお口から胃を通り、小腸、大腸で栄養分を取り込み、肛門で排泄されます。食べ物やつばを飲み込むと胃や腸に唾液が一緒に流れていき、お口の中に生息する細菌もこれらとともに胃や腸内へと入り込みます。
歯周病菌には様々な種類がありますが、その1つであるジンジバリス菌が腸に流れ込むと腸内細菌叢(腸内フローラ)がバランスを崩し、腸のバリア機能が低下、血中に細菌由来の毒素量が増加することがわかってきました。
こうした状態は歯周病と肥満や糖尿病の関連に見られる状態と共通する部分も多く、歯周病菌は、もはやお口の中の問題だけではなく、全身の健康に関与する可能性が高いとして、ますます口腔環境が注目され始めています。

歯周病が遠く離れた腸に悪さをするってホント?

歯周病は、お口の中の細菌によって歯を支えている歯茎や骨に炎症が起きて、だんだん支えがなくなっていく病気だということはこれまでにもお話ししてきました。歯と歯茎の境目にある溝(歯周ポケット)にある磨き残しなどをエサにして増殖した細菌の塊であるプラーク(歯垢)が溜まると、歯周病の原因菌が炎症を引き起こし、歯茎が赤く腫れ、出血するようになります。

さらに進行すると歯周ポケットが深くなり、細菌が侵入増殖し、歯石が付いたり歯を支えている骨が破壊されて悪化していきます。こうなると進行を止めたり、遅くすることはできますが、失ってしまった歯茎や骨を元通りにすることは、難しくなってきます。厄介なことに歯周病は、全身の病気との関連性が言われており、炎症性腸疾患、関節リウマチ、がん、脳卒中、認知症、心疾患、早産、低体重児など様々な病気のリスクを上げることにもなります。

これらのメカニズムは、歯周病の原因菌が作り出す病気を引き起こしたり悪化させたりする様々な物質が、炎症を起こしている歯茎や骨から体内に侵入し、血流に乗って全身を巡り、様々な場所に悪影響を及ぼし、糖や脂質の代謝を妨げたりしているからなのです。

* 歯周病菌による全身への影響 ※図はイメージです

このように歯周病は、様々な病気の原因あるいは悪化させる要因となっていますが、実は腸内細菌叢のバランスが崩れることが原因で起きる病気と共通していることが多いのです。

口の中の細菌が腸内細菌叢に影響している

その理由は、口の中の細菌が腸内細菌叢に非常に影響しているからとも考えられています。歯周病を患っていると、口の中の細菌叢のバランスが崩れ、歯周病菌が増えた状態になっています。唾液1cc中には約1億個の細菌が含まれていると言われています。ヒトは1日に約1500cc程度のだ液をせっせと飲み込んでいますから、相当な数の歯周病菌を飲み込んでいるわけです。胃の中の酸性度は、食事時には胃酸が大量に分泌されるのでとても高く、飲み込んだ口腔内の細菌は、ほとんど死滅してしまいます。

ところが、食間、特に夕食後から就寝中、そして朝食までの間は、胃酸の分泌が少なくなるために酸性度は低下していき、一時的に中性に近い状態になることさえあります。

一方、眠っている間も、口の中の細菌は唾液と共に飲み込まれ、胃へ運ばれていきます。就寝中は口の中の自浄作用が低下しているので、細菌の繁殖は盛んになっていますから、飲み込まれた歯周病菌が、酸性度の低い状態の胃を通過して腸まで到達する確率はとても高くなります。

つまり歯周病に罹った歯茎や骨からだけでなく、腸からも歯周病菌や関連物質が体内に侵入して、糖尿病をはじめとしたさまざまな病気を引き起こしたり、悪化させたりしているのです。

歯周病菌の代表であるポロフィロモナス・ジンジバリス(ジンジバリス菌)は白血球などの免疫細胞の誤作動を起こすたんぱく分解酵素を分泌し、免疫機能を低下させます。これにより他の細菌を爆発的に増殖させ、大きな影響を及ぼします。少数でも自分以外の細菌などを巻き込んで病気を引き起こすものを「キーストーン病原体」と呼びますが、ジンジバリス菌がまさにそれなのです。

ジンジバリス菌は口の中にあっては歯周病を発症させ、腸内においては腸内細菌叢のバランスが崩れる原因になります。ジンジバリス菌には、さらに他の細胞に侵入する能力があり、腸まで到達すれば、上皮細胞の中に入り込み、腸管壁のバリアに不調和を起こさせて、細菌、ウィルス、有害物質などが取り込まれ、様々な病気を引き起こすことになると言われています。

健康な腸-腸内細菌叢を保つには

バランスの良い食事をよく噛んで食べて消化・吸収・排泄という一連の消化器系の機能を健全に働かせることはもちろん大切ですが、加えて、口の中を清潔な状態にして、飲み込む菌の数、中でも歯周病菌の数を減らすことも非常に大切です。

腸内細菌叢の中には、短鎖脂肪酸を産生し、腸内を酸性に傾けてくれることにより、歯周病菌が住み着くことを防いでくれるタイプの善玉菌がいます。歯周病菌は酸性に傾いた環境では生きていくことはできません。したがって、善玉菌のエサになるレジスタントスターチを積極的に摂取することには、大きな意味があると考えます。飲み込む歯周病菌を減らす(理想的には無くす)、待ち受ける腸は善玉菌が元気にバリアするという環境を是非作っていただきたいと思います。

腸活をしているのに、効果をあまり感じない・・・
という方は、今一度ご自身のお口の中の状況もチェックし、効果的な腸活を目指しましょう。