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歯周病と全身疾患 (3)糖尿病

歯周病があると、どうして血糖値が高くなるの?

なぜ、歯肉の炎症である歯周病が糖尿病に関わってくるのでしょうか。
歯周病の症状が悪化して出血や膿を出しているような歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されています。中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケット表面積の合計は掌(てのひら)と同じ程度と考えられています。歯周ポケットの中身は外からはなかなか見えませんが、手のひらサイズの出血や膿が治療なしで放置されていると考えると、身体全体への影響も無視できない問題であることが理解できると思います。
ポケットから出て血流に乗った炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします(インスリン抵抗性)。このため、糖尿病が発症・進行しやすくなります。

歯周病治療で血糖値が下がる!

最近では歯周病と糖尿病は密接に関連していると言われており、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。

患者さん自身のブラッシングによるプラークコントロールをしっかり行い、歯科医院で炎症の原因となっている歯石を確実に取り除く(スケーリング)ことで歯肉の炎症をコントロールできれば、インスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールも改善するということが、日本での研究を含めた多くの臨床研究で報告されています。

糖尿病自体が全身の病気

糖尿病と診断されても多くの場合は、自覚症状がありません。ところが、血糖値が高い状態を長く放置していると、目や腎臓の細い血管など全身のあちこちの血管が傷つき、さまざまな病気を招いてしまいます。これを糖尿病の合併症と言います。

糖尿病から合併症が進む理由

(1)活性酸素によって血管を傷つける
血液中に増え過ぎたブドウ糖は血管の壁にある内皮細胞に入り込みます。すると、活性酸素が発生し、血管を傷つけてしまうと考えられています。

(2)増えた糖とたんぱく質が結びつき編成を起こす
増え過ぎたブドウ糖は細胞内のたんぱく質に結合する性質があります。血管の細胞とブドウ糖が結合すると、細胞が変質してしまい、正常な機能を保てなくなってしまいます。

(3)免疫機能の低下
血液が高血糖な状態が続くと、免疫の役割を果たす白血球の機能が低下します。このためさまざまな感染症に罹りやすくなります。

(4)痛みに鈍感になる
糖尿病は身体中の血管を傷つけるため、抹消の神経障害を起こしやすくなります。この神経障害によって痛みに鈍感になるため、さまざまな病気があっても気付きにくくなります。

糖尿病自体が血管の病気のため、特に毛細血管が多い臓器で症状が出やすくなります。
目が悪くなる糖尿病網膜症、腎臓が悪くなる糖尿病腎症、神経が悪くなる糖尿病神経障害の3つが代表的で「三大合併症」と呼ばれます。最悪の場合、それぞれ失明、血液透析、足の指などの切断にまで至ります。
また、糖尿病は動脈硬化を進めて、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすこともあります。

糖尿病と歯周病の関係

元々、糖尿病の人は暴飲暴食が多く、お口にモノが入っている状態が長くなります。このため口腔内のPhバランスが崩れ、歯周病のリスクが高いのです。さらに糖尿病が悪化することで、歯周病菌の増殖を助長し、結果として相互に悪化の悪循環を起こします。

■歯周病のチェックリスト

今のところ自覚症状はない、そんなあなたも安心はできません。口臭の8割はむし歯や歯周病をはじめとする口腔内のトラブルが原因と言われていますから、まずは「歯周病セルフチェック」で、あなたのお口の健康状態を確かめてみてはいかがでしょうか(特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会 ホームページより)。

歯周病と全身疾患の関係

・心臓疾患
・脳血管疾患
・糖尿病
・骨粗鬆症
・消化器系のがん
・誤嚥性肺炎
・早産と低出世体重時
・メタボリックシンドローム


健口から健幸を追求する私たちの考え方は、「歯は痛くなってから治療する」のではなく、「歯が痛くならないように予防する」ことが重要だと考えます。

■歯を「みがいている」ことと、「みがけている」は違う!

私たちの「食べられるしあわせ」は生きている幸せと直結します。そのために普段から歯周病にならないようなお口の中のメンテナンス「口腔ケア」に注目して、口の中の衛生管理を実践していくことがなによりも重要です。